2004年5月5日
朝から雨。
マジですか?と問いたくなるような雨。
雨合羽を着て会所へ行く。
高張りは一通り出すが、警固は出さず。
小降りになったと思うと、また強く振る、そんな雨。
そこへ神社から連絡が入る。お白州の神輿の屋根を外してほしいとか。
そんなことは例年いわれたことが無い。急遽大工さんに連絡を取る。
結果、これは空振りになるのだが。なにをどう騒いだのかがわからない。
太鼓講中があつまってきて、神社にお参りへと向かう。
花を頂いて、返礼に手ぬぐいをお渡しする。
しかし憂鬱な雨。上がってほしいな。
その願いが通じたのか、昼ころには雨もかなり小降りに。
ときおり降るが、たいしたことは無い。
太鼓講中の手で太鼓が出されてきて、準備を始める。
俺も準備をする。警固の準備。ビニールを提灯にかけて自分も合羽を着る。
もうほとんど降ってないが、おいでの前に濡れたくない。
太鼓の準備が済むと、太鼓講中への太鼓引渡し式。
式を済ますと、太鼓は屋敷分へ向かう。
屋敷分で折り返し、また太鼓は引き返してくる。
片町の会所に寄ったとき、錦戸親方が部屋の力士を連れてきていた。
お相撲さんというのは、えらく大きいものだ。
ちょっと太鼓を叩いたりするが、これくらい力があるとすごい。
三々五々、記念撮影をしたりして太鼓は神戸へ向かう。
途中、神路清浄を待つため、旧道と府中街道の交差点で待つ。
道清めが行き過ぎる。カッコいいね。
神戸に着いて、また一休み。
ここで町内が集まって記念撮影をする。
なかなかカッコいいでしょう。普段あまりやらないからね。
そして太鼓は出発。西馬場を経由して、鳥居前に戻る。
ここでササラがつく。
今年、復活したのだ。
ササラで道を清めながら、太鼓は鳥居をくぐり、神社へと進む。
昔は、ササラの調子をあわせるのに、府中小唄を歌いながら進んだという。
ああ、六所明神さま くらやみ祭りよ
闇に旅所へ ササラサイサイ
闇に旅所へ渡御なさる
あれは灯じゃない空の星 星さえ府中を出て覗く。
サァッサヤサキタ ササラサイサイ
この調子が、ちょうどいいのだろう。
行列は隋神門をくぐり中雀門の前まで進む。
太鼓を宝物殿前のスペースに収めて解散する。
解散となった後で、お差込の様子を見に、お白州へ入る。
ちょうど、御本社の飾り綱にさらしを巻いていた。
一通り済むと、役員は外へ出る。
社務所の人たちによって、お白州の砂にはきれいに目をつけられてゆく。
我々はいったん会所へ戻り、一休みする。
時間も押し詰まってきた。準備を済ませて会所に皆が集まる。
今年は手違いがあったので、神戸で担ぎ棒を変えねばならない。
番場には古い担ぎ棒が届き、新しい担ぎ棒は神戸に行ってしまっていたのだ。
行列を組み、神戸へと向かう。ホイサホイサと声をあげつつ進む。
神戸で、問題の古い担ぎ棒を新しい担ぎ棒に替える。そして、神社へと行列は向かう。
参道の途中で、先駆の行列とすれ違う。
我々は脇により先駆行列をかわす。
先駆は、警固を先導にして獅子頭や太刀などを奉じた行列だ。
普段、宝物殿に収蔵してある品々を、大祭のときに出すのだ。
我々は、すでに引き出した太鼓の列の脇を通り、中に進む。
隋神門をくぐり、中雀門へ。
外は人がいっぱいだ。
しかし、中に入ると閑散としている。それが不思議な感じがする。
まぁ、各宮の限られた人間しか、入らないからなのだが。
しばし、待つ。
中雀門の中のほうが、人が少ないせいか、緊張感は少ないように感じる。
で。
鳴った。
花火が上がり、門が開かれ、白丁を着た青年が中に入る。
ホイサホイサの掛け声。外ではいっせいに太鼓が鳴り出す。
一之宮が出てくる。
いったん、拝殿前で神輿を下ろして、四天をつける。
少し揉み、中雀門をくぐって出てゆく。
最近は、時間の制限があるためか、比較的進行が早い。
次々と神輿が出てきて、四天を組み、外へ出てゆく。
六之宮が出て、いよいよ御本社が。
ここからは慌しい。
神輿が出たので、四天を組む。ロップをかけて締め上げる。
中雀門を出るとき、ウマを持って外へ。
隋神門前まで運んでしまう。
そこで一息入れ、神輿が隋神門を出るのを待つ。
神輿が隋神門を出ると、少しもんだ後、下ろされる。
ウマを入れて、四天の組みなおし。トンボを長いものに変え、今度はロップを水で締める。
短いトンボは神戸の会所へ。
あっという間に神輿は宮之盗_社まで行き、そこで挨拶をする。
ここでウマは要らなくなるので、これも神戸の会所へ。
今年はペースが早い。一気に大鳥居を出て、甲州街道へ出てしまう。
ここで六之宮と軽く揉みあう。
昔なら喧嘩だろう。
六之宮と入れ違いに少し東に。
引き返したところで神輿が下ろされる。
クサビが抜けたとのこと。
神戸の会所まで行き、ウマを取って返す。ウマを入れてクサビを入れなおす。
3日に入れた鉄パイプが短かったため、クサビが抜けたようだ。
釘を打って応急処置。何とか直す。
しばらくそのまま休み、再度神輿が上がったら今度はどんどん進む。
六までがすでに交差点だ。五之宮と六之宮が揉みあう中へ、御本社も入る。
警固はとうに道を開いている。
交差点に入り、写真をとる。戦場カメラマンのような状態だ。
と、六之宮との間にはさまれる。本社と六之宮のあいだで身動きが取れなくなる。
自分の骨がギシギシと鳴るのがわかる。
必死で押し合う。命がけとはこのことだ。
フィルムが尽きた。というよりさっさと撮り切った。
担ぎに入る。
もう、わけがわからない。
担ぎ手の掛け声。
太鼓の音。
叫び声。
神輿の飾りが鳴る音。
観客のどよめき。
すべてが集まり「うわぁん」という音になる。
白・金・桃・紫・黒・光・闇。
そういうものが一緒くたになって、周囲に靄がかかったよう感じがする。
何度かぶつかる寸前まで押し合ったが、六之宮がついに下ろされる。
「下ろした下ろした」との声。
もう、突っかかるなと。
「うわぁん」という音が少し小さくなる。
ギリギリをかわして、本社が交差点を練る。
ホイサホイサホイサホイサ。
「うわぁん」という音が止んだとき、今年のおいでが終わった。
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